2011年6月5日日曜日

ユーザーエクスペリエンスの入り口に立った時

今振り返るとこれがユーザーエクスペリエンスの入り口だったんだなと思う案件があります。

それは数年前に携わったデジタルコンテンツの制作で、クライアントからは「初産を迎える夫婦向けに出産日をカウントする待ち受けを作ってほしい」とだけ言われスタートしました。

ちょうどそのころ、初めての子供が生まれたばかりでターゲットとなるユーザーとかぶったため、「ターゲットユーザー自分」のもと、どうすれば使われるデジタルコンテンツになるか?と考えながら制作を進めました。

やったことを大きく3つのSTEPに分けて説明します。


■STEP1 経験を思い出す
まずは自分が経験したことを思い出します。
自分の経験上、男性と女性とでは妊娠発覚後に経験する内容は大きく異なります。

女性の場合は自分の体に変化が出てくるため、赤ちゃんが成長している感覚や、自身の体調の変換に敏感になります。

その反面、男性の場合は女性の変化に気づきにくく出産予定日も忘れがちで、出産するまで父親の実感が沸かない男性もいます。

この意識の違いが問題となって不満が溜まったり喧嘩したりするので、この男女の意識の違いを洗い出し、解決に導けることを軸としてコンテンツ内容を考えます。



■STEP2 意識の違いを洗い出す
コンテンツ内容を考える前に認識の違いを正しく認識するためにフロー化します。



※実際はもっと細かく、いくつかパターンがあります。


フローのギャップを意識しながら夫婦のコミュニケーションを円滑に行うために必要な機能、デザイン、演出を考えます。



■STEP3 機能、デザイン、演出を考える
図を見ながらギャップを埋めるのに必要そうな機能、デザイン、演出を考えます。
たとえば、

・出産予定日までの残り日数を表示できるようにする
・妊娠月を表示できるようにする
・男女別にデザイン、演出を変える
・男女別に最適なメッセージを表示できるようにする


などが考えられます。
これにより、下記のようなユーザーの変化が期待できます。


1.出産予定日、妊娠月をすぐに確認できるので出産日を忘れることが少なくなり、他人や妻から「父親の自覚が足りない」と文句を言われる可能性が下がる。

2.変化に敏感な妻が待ち受けを先に見つけ設定し、その後、夫バージョンを男性側の携帯電話に設定して夫婦で使うようになる。


3.夫向けと妻向けでデザイン、演出、メッセージを変えることにより、出産までの不安や不満を軽減できる。


このようなユーザーの変化を期待しつつ、デザインの方向性、演出を考えてからデザイナーと細部を決めていき制作を進め一般公開します。




■結果どうなったか?
当初予定していたダウンロード数を大きく上回り、予定していた公開日を延期することになりました。

またとある掲示板で、

「こんな待ち受けあるなんて便利!パパバージョンもあるみたいだから、家に帰ってきたら旦那にも設定させよう♪」

などのコメントがあり、予定していたユーザーの変化2を目の当たりにすることもできました。


このコメントこそがユーザーエクスペリエンスと言われている考え方の入り口ではないかと、実感するとともに、この道の奥深さを理解することが出来た貴重な案件となりました。

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