2011年6月25日土曜日

ファシリテーションの3つの基本的なテクニック

ファシリテーションはよく司会進行役といわれるけど、その本質は会話のコントロールなので一言で言うのであれば「場(組織)の支配」がもっとも適切な言葉になります。

そんな会話をコントロールをするテクニックを身につけたい人のために、ファシリテーションの基本的なテクニックを3つにまとめてみました。


■傾聴の姿勢
「あなたの話を聴いていますよ」と前向きな姿勢を言語、非言語(態度)の両方使って相手に伝え、相手との信頼関係構築や「相手が話したいな」と思えるような気持ちに変化させる方法です。

まずは傾聴の姿勢で、相手が会話したいと思わせないと話が続かないので、3つのテクニックの中でも一番初めに実践します。

さらに、ちゃんと傾聴の姿勢をとろうとすると、どんなに嫌な相手との会話でも不思議と会話には興味が持てるという特徴もあります。

以下は自分なりの方法。

・常に笑顔で会話を聴く
・少し前のめりになる
・相手のタイミングに合わせてうなずく
・うん、おぉ、楽しいねなどの相槌をうつ
・相手の目を見る
・手を机の上に置く


■受容の心
「相手の意見を一度は受け入れるように見せる」ことで、信頼関係の更なる構築や少し言いにくい発言を引き出すための雰囲気を作り出す方法です。

基本的には否定的な発言をしないで「うんうん」「なるほど」など相手の発言を受け入れたように見せたり、「今のは○○○○ってことですか?」など要約して確認したりします。


■質問とキーワードの選択
相手が発言した内容からもっと引き出したい内容のキーワードを抽出して会話をコントロールする方法です。

質問方法にはクローズクエッション(YES/NOで答えられる質問)とオープンクエッション(自由回答)の2種類があり、通常はクローズクエッションで会話のきっかけを作り、オープンクエッションで話を進めていきます。

例えば、「昨日の夜は飲みに行ってたの?」と質問して「うん。昨日は同僚と銀座で飲みに行ってきた!」と答えた場合、


「友人」というキーワードを抽出するのであれば「もしかして同僚って同じ部署の○○さん?」と、会社について話を進められます。
「銀座」というキーワードを抽出するのであれば「銀座でどこのお店に行ったの?」と、銀座のお店について話を進められます。
「飲み」というキーワードを抽出するのであれば「何のお酒飲んだの?」と、飲んだお酒の種類について話を進められます。


この様に、抽出するキーワードをファシリテーター自身が意図的に選ぶことにより、簡単に会話をコントロールできるようになります。


■まとめ
これらを覚えてから、打ち合わせの準備の仕方や席の座り方、人数の調整など、もっと細かい考え方を覚えても遅くは無いと思います。
そもそも上司が基本を実践出来てない場も多いし・・・。

なのでファシリテーション能力を身につけたい人は、

・傾聴の姿勢
・受容の心
・質問とキーワードの選択

の3つをキッチリと身に着けることに注力する方が良いと思います。

2011年6月5日日曜日

ユーザーエクスペリエンスの入り口に立った時

今振り返るとこれがユーザーエクスペリエンスの入り口だったんだなと思う案件があります。

それは数年前に携わったデジタルコンテンツの制作で、クライアントからは「初産を迎える夫婦向けに出産日をカウントする待ち受けを作ってほしい」とだけ言われスタートしました。

ちょうどそのころ、初めての子供が生まれたばかりでターゲットとなるユーザーとかぶったため、「ターゲットユーザー自分」のもと、どうすれば使われるデジタルコンテンツになるか?と考えながら制作を進めました。

やったことを大きく3つのSTEPに分けて説明します。


■STEP1 経験を思い出す
まずは自分が経験したことを思い出します。
自分の経験上、男性と女性とでは妊娠発覚後に経験する内容は大きく異なります。

女性の場合は自分の体に変化が出てくるため、赤ちゃんが成長している感覚や、自身の体調の変換に敏感になります。

その反面、男性の場合は女性の変化に気づきにくく出産予定日も忘れがちで、出産するまで父親の実感が沸かない男性もいます。

この意識の違いが問題となって不満が溜まったり喧嘩したりするので、この男女の意識の違いを洗い出し、解決に導けることを軸としてコンテンツ内容を考えます。



■STEP2 意識の違いを洗い出す
コンテンツ内容を考える前に認識の違いを正しく認識するためにフロー化します。



※実際はもっと細かく、いくつかパターンがあります。


フローのギャップを意識しながら夫婦のコミュニケーションを円滑に行うために必要な機能、デザイン、演出を考えます。



■STEP3 機能、デザイン、演出を考える
図を見ながらギャップを埋めるのに必要そうな機能、デザイン、演出を考えます。
たとえば、

・出産予定日までの残り日数を表示できるようにする
・妊娠月を表示できるようにする
・男女別にデザイン、演出を変える
・男女別に最適なメッセージを表示できるようにする


などが考えられます。
これにより、下記のようなユーザーの変化が期待できます。


1.出産予定日、妊娠月をすぐに確認できるので出産日を忘れることが少なくなり、他人や妻から「父親の自覚が足りない」と文句を言われる可能性が下がる。

2.変化に敏感な妻が待ち受けを先に見つけ設定し、その後、夫バージョンを男性側の携帯電話に設定して夫婦で使うようになる。


3.夫向けと妻向けでデザイン、演出、メッセージを変えることにより、出産までの不安や不満を軽減できる。


このようなユーザーの変化を期待しつつ、デザインの方向性、演出を考えてからデザイナーと細部を決めていき制作を進め一般公開します。




■結果どうなったか?
当初予定していたダウンロード数を大きく上回り、予定していた公開日を延期することになりました。

またとある掲示板で、

「こんな待ち受けあるなんて便利!パパバージョンもあるみたいだから、家に帰ってきたら旦那にも設定させよう♪」

などのコメントがあり、予定していたユーザーの変化2を目の当たりにすることもできました。


このコメントこそがユーザーエクスペリエンスと言われている考え方の入り口ではないかと、実感するとともに、この道の奥深さを理解することが出来た貴重な案件となりました。