2011年7月31日日曜日

認知と感情の心理学 その2

前回のエントリーの続きです。
あまりまとめる時間が無かったのでメモ程度になってしまいました。。


■短期記憶について
ワーキングメモリという考え方があります。

・言葉を保存する音韻ループ
・既知知識を保存するエピソードバッファ
・イメージを保存する視空間的記銘メモ

上記3つのワーキングメモリと、これをまとめて処理する中央実行系があり、人間はワーキングメモリを使って短期記憶をしているという考え方です。詳しくはWikipediaを参照してください。

詳細はWikipediaに任せるとして、最も重要なのはワーキングメモリには容量が存在し、人間は多くのことを短期記憶できないということです。マジックナンバー7もここからきています。

またテキストを読むとワーキングメモリがどんどん消費されるため、ワーキングメモリの容量の少ない人は、長文が読めない(長いメールを読まない)、文章が理解できないなどの問題が出てきます。

流行の「●●を実現するための3のポイント」というBlogタイトルや、Twitterなどは、このワーキングメモリを消費しにくいからこそ様々な人に好まれているのだと思います。

長文でのコミュニケーションが減っている中、もしかしたらワーキングメモリの容量は減少傾向にあるのかもしれません。


■ヒューリスティックス
問題解決する方法はいくつかありますが意識して考えなければいけないのが「ヒューリスティックス(経験則)」による解決法です。

大雑把に説明すると最終目標を小さい下位目標に分割して問題を解決に導く考え方ですが、基本的に問題を解決しようと思ったときには、この手法を使っていると思います。

これを意識的に出来るか、出来ないかで、問題解決スピードが変わってくるので、何か問題が発生したときには、下位目標を細かく書き出す癖をつけておく必要があると思います。

そしてこのヒューリスティックスは「経験」が重要になってきます。失敗を恐れず、色々な問題にぶつかるからこそ、問題解決のスキルが向上される。

ごくあたりまえですが改めて経験の重要さを感じます。


関連記事
認知と感情の心理学1

2011年7月16日土曜日

認知と感情の心理学 その1

認知と感情の心理学 (心理学入門コース 2)という本をよんで、WEBにも使えそうな考え方があったので色々と考えをまとめてみました。

あくまで本を読み自分なりに解釈した内容になるので、本来の認知心理学の言葉の意味とは違ったり、そもそも勘違いしている可能性もありますが、細かいことは気にしない方向で書いてみます。


■感情について
感情は「気分」と「情動」の2種類があり、この違いを正しく理解することでユーザーがアクションしやすいコンテンツや機能を考えられるようになると思います。

・気分
いい気分、悪い気分のように漠然としている強度は弱いものの長期間続く場合もある。原因もはっきりしないし、身体的な変化も起こりにくい。

・情動
怒り、喜び、嫌悪のように細かい区分けが出来、強度は強いが短時間しか持たない。原因は特定できるし、身体的な変化も起きる。


ユーザーを何かしらのアクションに誘導させたいのであれば強い感情が必要なのでこの「情動」を生み出すのが重要です。

facebookのいいねボタンやTweetボタンなどはコンテンツを見て生み出された「情動」を思考を使わず他人に伝えることのできる手段だからこそ、多くの人が気軽に使っているのかと思います。

そう考えると、この情動を中心に考えるとサイトに必要な機能、コンテンツのアイデアが出やすくなりますね。


■注意について
注意には意図的注意と自動的注意があり、自動的注意を上手く利用するとユーザーの視線を制作者の意図通りに誘導しやすくなります。

この自動的注意を上手く活用し、ユーザーに必要な情報を早く見つけてもらうためには直接的な手がかりが有効です。

これはオブジェクト全体を光らせたり、色を反転させたりなど「空間を変えるような大きな変化」を見せることで実現可能です。

ECサイトでカートボタンだけ目立たせるのは、この直接的なてがかりを上手く活用している例だと思います。


■プライミング効果について
プライミング効果とは、先に受けた刺激が後に受ける刺激に影響するという効果です。
これを細かく分類した感情プライミング効果というのがあるんですが、この考え方も色々と活用できそうです。

例えばECサイトで商品が売切れてしまった場合、類似製品を表示しますが、これは「欲しかった商品が無くてショック」という感情から、「仕方がない。類似商品で我慢するか」という感情に誘導しています。

商品が売り切れてなければ、類似商品を欲しいと思う感情は生まれないわけです。

そう考えると、先行刺激で発生した感情を上手く転換している例とは言えませんか?

ユーザーのネガティブな感情を上手く転換するための、感情プライミング効果をしっかり考える必要があるのではないかと思います。



長くなりそうなので続きは今度書きます。

2011年7月4日月曜日

人の話を聞く

ファシリテーションをより深く知るために「プロカウンセラーの聞く技術」を読んでみました。


前の記事と通じるところも多いんですが、心のケアを目的としたカウンセラーでは考え方が違う部分があったため違う確度から「聞く」を学ぶことができ、参考になりました。

詳細は本を読んでいただくとして、気になった点をいくつか上げます。

■「しかし」「けれど」「でも」などの逆接の接続詞を出すと聞き手としては失格
聞き手は意見を言ってはいけないため。これは相手の意見を引き出すときに重要な考え

■相手からされた質問は「自分のことではなく、相手に関することがほとんど」
自分の聞いて欲しい話を、相手に質問する形で述べる。この手の質問には自分の意見を話す必要が無い。

■答えられない質問、答えがいくつもある質問こそ、大切な質問
「分からない」「難しい」も1つの答え。答えられない質問には答えないで相手の心を聞くのも重要

■素直に聞く
意見を言わずに、素直に聞く例
息子:「うちの学校の教師はアホばっかりだ」親:「へえ、お前の学校の教師はアホばっかりなのか」息子:「親父もそう思うか」親:「そら、そうだ(お前がそう思っているのだから、お前の中ではそうなんだろう)」

■オープンになる
相手に偏見を持たずに素直に受け入れること「あなたがそう思っているのであれば、あなたにとってはそうなんでしょ。」

■対等であれ
聞く態度の基本は聞き手と話し手が対等な関係にあること。それは話し手が子供であってもそう。

■言い訳をしない
⇒「電車が遅れたから遅刻した」と話しても意味がない。それが相手を待たしたことの謝罪にはならないから。

■心理学は行動の学問
発言を気にするのではなく「どうしてその発言が出たんだろう?」と行動に関心を持つ必要がある。

■したくない話ほど前置きが長い
前置きだと思った場合は、話を横道にそらさない

■無意識を意識化すること
話して自らが自分の無意識に触れるように、話を聞いてあげるのが大切。無意識に抑圧している内容ほど触れて欲しくない話なので、無理に聞き出すと相手を傷つけてしまう。

■秘密の話1
秘密は言えないこと自体が重要。オープンになれば解決に向かうが同時に破滅も見えてくる。人を強制的に変革させてしまう。また秘密は他人にとっては軽いもの。

■秘密の話2
相手の秘密を数多く抱え込むと心を病んでいく。心を病まず、相手の秘密を知りたがる人間は相手を破壊することに興味がある人

■沈黙と間
相手の質問を待つ、心のつながっている沈黙と間も必要。特に悩みが深ければ深いほど、この力は必要とされる。

2011年6月25日土曜日

ファシリテーションの3つの基本的なテクニック

ファシリテーションはよく司会進行役といわれるけど、その本質は会話のコントロールなので一言で言うのであれば「場(組織)の支配」がもっとも適切な言葉になります。

そんな会話をコントロールをするテクニックを身につけたい人のために、ファシリテーションの基本的なテクニックを3つにまとめてみました。


■傾聴の姿勢
「あなたの話を聴いていますよ」と前向きな姿勢を言語、非言語(態度)の両方使って相手に伝え、相手との信頼関係構築や「相手が話したいな」と思えるような気持ちに変化させる方法です。

まずは傾聴の姿勢で、相手が会話したいと思わせないと話が続かないので、3つのテクニックの中でも一番初めに実践します。

さらに、ちゃんと傾聴の姿勢をとろうとすると、どんなに嫌な相手との会話でも不思議と会話には興味が持てるという特徴もあります。

以下は自分なりの方法。

・常に笑顔で会話を聴く
・少し前のめりになる
・相手のタイミングに合わせてうなずく
・うん、おぉ、楽しいねなどの相槌をうつ
・相手の目を見る
・手を机の上に置く


■受容の心
「相手の意見を一度は受け入れるように見せる」ことで、信頼関係の更なる構築や少し言いにくい発言を引き出すための雰囲気を作り出す方法です。

基本的には否定的な発言をしないで「うんうん」「なるほど」など相手の発言を受け入れたように見せたり、「今のは○○○○ってことですか?」など要約して確認したりします。


■質問とキーワードの選択
相手が発言した内容からもっと引き出したい内容のキーワードを抽出して会話をコントロールする方法です。

質問方法にはクローズクエッション(YES/NOで答えられる質問)とオープンクエッション(自由回答)の2種類があり、通常はクローズクエッションで会話のきっかけを作り、オープンクエッションで話を進めていきます。

例えば、「昨日の夜は飲みに行ってたの?」と質問して「うん。昨日は同僚と銀座で飲みに行ってきた!」と答えた場合、


「友人」というキーワードを抽出するのであれば「もしかして同僚って同じ部署の○○さん?」と、会社について話を進められます。
「銀座」というキーワードを抽出するのであれば「銀座でどこのお店に行ったの?」と、銀座のお店について話を進められます。
「飲み」というキーワードを抽出するのであれば「何のお酒飲んだの?」と、飲んだお酒の種類について話を進められます。


この様に、抽出するキーワードをファシリテーター自身が意図的に選ぶことにより、簡単に会話をコントロールできるようになります。


■まとめ
これらを覚えてから、打ち合わせの準備の仕方や席の座り方、人数の調整など、もっと細かい考え方を覚えても遅くは無いと思います。
そもそも上司が基本を実践出来てない場も多いし・・・。

なのでファシリテーション能力を身につけたい人は、

・傾聴の姿勢
・受容の心
・質問とキーワードの選択

の3つをキッチリと身に着けることに注力する方が良いと思います。

2011年6月5日日曜日

ユーザーエクスペリエンスの入り口に立った時

今振り返るとこれがユーザーエクスペリエンスの入り口だったんだなと思う案件があります。

それは数年前に携わったデジタルコンテンツの制作で、クライアントからは「初産を迎える夫婦向けに出産日をカウントする待ち受けを作ってほしい」とだけ言われスタートしました。

ちょうどそのころ、初めての子供が生まれたばかりでターゲットとなるユーザーとかぶったため、「ターゲットユーザー自分」のもと、どうすれば使われるデジタルコンテンツになるか?と考えながら制作を進めました。

やったことを大きく3つのSTEPに分けて説明します。


■STEP1 経験を思い出す
まずは自分が経験したことを思い出します。
自分の経験上、男性と女性とでは妊娠発覚後に経験する内容は大きく異なります。

女性の場合は自分の体に変化が出てくるため、赤ちゃんが成長している感覚や、自身の体調の変換に敏感になります。

その反面、男性の場合は女性の変化に気づきにくく出産予定日も忘れがちで、出産するまで父親の実感が沸かない男性もいます。

この意識の違いが問題となって不満が溜まったり喧嘩したりするので、この男女の意識の違いを洗い出し、解決に導けることを軸としてコンテンツ内容を考えます。



■STEP2 意識の違いを洗い出す
コンテンツ内容を考える前に認識の違いを正しく認識するためにフロー化します。



※実際はもっと細かく、いくつかパターンがあります。


フローのギャップを意識しながら夫婦のコミュニケーションを円滑に行うために必要な機能、デザイン、演出を考えます。



■STEP3 機能、デザイン、演出を考える
図を見ながらギャップを埋めるのに必要そうな機能、デザイン、演出を考えます。
たとえば、

・出産予定日までの残り日数を表示できるようにする
・妊娠月を表示できるようにする
・男女別にデザイン、演出を変える
・男女別に最適なメッセージを表示できるようにする


などが考えられます。
これにより、下記のようなユーザーの変化が期待できます。


1.出産予定日、妊娠月をすぐに確認できるので出産日を忘れることが少なくなり、他人や妻から「父親の自覚が足りない」と文句を言われる可能性が下がる。

2.変化に敏感な妻が待ち受けを先に見つけ設定し、その後、夫バージョンを男性側の携帯電話に設定して夫婦で使うようになる。


3.夫向けと妻向けでデザイン、演出、メッセージを変えることにより、出産までの不安や不満を軽減できる。


このようなユーザーの変化を期待しつつ、デザインの方向性、演出を考えてからデザイナーと細部を決めていき制作を進め一般公開します。




■結果どうなったか?
当初予定していたダウンロード数を大きく上回り、予定していた公開日を延期することになりました。

またとある掲示板で、

「こんな待ち受けあるなんて便利!パパバージョンもあるみたいだから、家に帰ってきたら旦那にも設定させよう♪」

などのコメントがあり、予定していたユーザーの変化2を目の当たりにすることもできました。


このコメントこそがユーザーエクスペリエンスと言われている考え方の入り口ではないかと、実感するとともに、この道の奥深さを理解することが出来た貴重な案件となりました。

2011年5月8日日曜日

新組織をまとめるのに気をつけていること

組織改編で、所属している組織がバラバラの総勢15名が兼務として所属する新組織のまとめやくの一人になったので、最近心がけていることをまとめてみました。

■その人が何を考えて何をしたいか知る
まず最初にやったことはメンバーの考え方を知ることからやりました。
具体的には一対一で話せる環境を作りその人の

・いままでの経歴(スキルの確認)
・この組織で実現したいこと
・業界内で感じていること

を雑談ベースで聞き出してメンバーの得手不得手、やりたいことを把握し、組織の強みと弱みを把握するための情報を集めました。

■何か言えば考えてくれる人だと思われる様にする
下っ端人生が長かった(9年ぐらい)ので、いつも上に立つ人間を勝手に評価していました。
その時の最大の評価基準は、下の人間の意見をまじめに聞く人か?というところです。


いくら優秀でも下の人間の面倒を見れない人にはついて行きたくないです。

これは、自分の意見を上に通してほしいと言うことではなく、発言した意図を汲み取りその意見がダメならダメと正当な理由込みで伝えてくれる、下の人間をちゃんと見ようとする人間かどうかを評価するところに重きをおいています。

そのため自分が上の立場になった時は、

・下の人間の意見(例え愚痴っぽい感じでも)はちゃんと聞き、自分の考えも相手に伝える
必要であれば上と掛け合い業務を調整する。
・小さな約束でも約束をしたら必ず行動する。(結果がダメでも約束して行動したという事実が大事)

を必ずやるように心がけています。
これで上と下との信頼関係を構築するようにしました。


■チームとしての一体感を出す
メンバー同士の横のつながりも大切なので、組織内のメンバーと一緒に仕事をして結果を出したいと思えるようにな雰囲気作りも心がけています。


人それぞれやり方や方向性が違う上に手探りな状態なので具体的にこれ!というポイント無いのですが、


・ワークショップを開催してメンバー全員で何かを成し遂げる
・意見を言いやすい雰囲気を作る

などは意識して動いています。


■まとめ
他にも細々な動きはしていますが、まずは味方を知り、上下左右の繋がりを強くすることからはじめています。

そうした上で、社内外に認められるような最良のアウトプットを出すための施策を考え、実行しています。(時間がないので基本は同時並行で動いていますが・・・)